欧州中央銀行総裁の表情解析から見る量的金融緩和政策の縮小決定†
著者†
水門善之(野村證券金融経済研究所), 勇大地(マイクロソフト)
概要†
欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏の金融政策を政策理事会にて決定する.現在,政策理事会の後には,ドラギ総裁とコンスタンシオ副総裁が会見を開き,金融政策運営に関する説明を行っている.本研究では,深層学習等に基づく表情認識アルゴリズムを用いて,会見中の両名の表情を解析し,「喜び」・「怒り」・「悲しみ」・「驚き」等の感情値の変化を計測した.その結果,量的金融緩和の縮小局面において,政策変更を行う直前回の会見では,ドラギ総裁の「喜び」の割合が低下し,「悲しみ」の割合が上昇する傾向が見られた.更に,コンスタンシオ副総裁は,政策変更の有無に関わらず,「喜び」の割合が,総裁とは逆の方向に変化する傾向が確認された.このような逆相関関係には,会見全体の印象が,ニュートラルになるような調整効果をもたらす可能性があると考える.
キーワード†
European Central Bank,Monetary Policy,Facial Recognition