021-07

2022-05-26 (木) 11:01:12 | Topic path: Top/021-07

第21回研究会

アセット・リターン予測AIとマクロ経済理論の融合―マルチタスク学習による正則化と識別―

著者

塩野剛志(クレディ・スイス証券)

概要

本研究では、資産価格リターンの予想を行うCNNを、マクロ経済の理論モデル(DSGE)とのマルチタスク学習により正則化する方法を提案する。経済理論が対象とする概念の一部は、現実の資産価格の決定メカニズムにも共有されている。したがって、マルチタスク学習によって共有因子を鮮明化することは汎化性能を改善する可能性がある。そこで、多数の経済金融時系列を入力とし、ResNetでリターンを予測するモデルの損失関数に対して、経済理論への整合性が制約となるようなペナルティを課した。つまり、共通の入力からDSGEモデルでマクロ経済変数へフィットする際の損失を、一定の重みでリターン予想の損失関数に加える、というマルチタスク学習を行った。実際、複数のハイパーパラメターの下での検証した結果、マルチタスク化によって、テストデータへの汎化性能が改善する傾向が示された。すなわち、多数の経済金融時系列を教師データとして受け取ったAIは、リターン予想に資する特徴の抽出を、経済理論と相応に整合的な仕方で行い、それが過学習の予防となって汎化性能が向上した可能性がある。また、Layerwise Relevance Propagationを応用することで、マルチタスクの共有因子のうち、DSGEで意味が特定(識別)されたある経済ファクターに寄与した成分のみを分別し、それが同時に資産リターンに与えた影響を抽出することで、経済ファクターから資産価格リターンへの影響を算出することが可能となり、モデルの解釈性を高めることにもなる。こうした取り組みは、データサイエンスと科学理論との融合を図るTheory-guided Data Scienceの考え方に着想を得たものであり、今後、経済金融分野への機械学習の応用に際して、様々な形で実装可能なものと思われる。

キーワード

マルチタスク学習, 正則化, CNN, ResNet, LRP, DSGE, Theory-guided Data Science

論文

fileSIG-FIN-021-07.pdf

添付ファイル: fileSIG-FIN-021-07.pdf 4189件 [詳細]
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