日銀「主な意見」の発言者分類モデルの作成と政策変更予測への応用†
著者†
末廣徹(みずほ証券, 法政大学), 木村柚里, 稲垣真太郎(みずほ証券)
概要†
本研究は、現在の日銀政策委員である9名の過去の講演内容をテキストマイニングによって分析した上で、任意の発言がどの委員の発言であるかを予測する機械学習モデルを作成し、精度を検証したものである。さらにその応用として、匿名の意見がまとめられた「主な意見」の発言者予測へのモデルの活用可能性を検討した。日銀の金融政策決定会合は、総裁と2人の副総裁に6人の審議委員を加えた9人の政策委員による合議制で決定される(多数決)。そのため、政策の決定内容だけでなく、各委員が独自に行う講演や匿名で公表される議事要旨などのテキストを読み込む必要がある。匿名で公表される議事要旨において、それぞれの発言が誰のものであるかを正確に当てることができれば、将来の決定会合における議論の方向性もつかみやすくなる。本稿では、日銀が金融政策決定会合の6営業日後をめどに公表している「主な意見」の発言者を予測することを目指した。実際に「主な意見」の発言者が誰であったのか(正解データ)を知ることはできないため、精度(的中率)を検証することはできないが、過去の9人の政策委員の発言からセンテンスごとにランダムに抽出した80%を学習データとし、20%テストデータとした検証を行うと、委員によっては90%近い精度で発言を当てることに成功した。また、各発言者のセンテンスデータセットに対して潜在的意味解析(latent semantic analysis; LSA)による重要文抽出を行った上で各委員の特徴を強めることで、モデルの精度は改善するかどうかの検証も行った。最後に、16年以降の「主な意見」について、どの委員の発言に近いものが多かったかを調べ、金融緩和が行われた際(または直前の会合)においてどの委員の発言が多かったかを調べることにより、金融政策の変更を予測できるかどうかの検証(イベントスタディ)も行った。
キーワード†
テキストマイニング, 日本銀行, 潜在的意味解析
論文†
(10月9日以降に公表いたします)