経済データを用いた政府の景気基調判断文の生成とバイアスの検証†
著者†
末廣徹, 木村柚里, 稲垣真太郎(みずほ証券)
概要†
本稿では,日本の景気変動に一致すると考えられている複数の経済指標を用いて,日本政府の景気の基調判断文を生成することができるかどうかの検証を行った.政府の景気基調判断は,内閣府が発表する月例経済報告で「回復している」や「悪化している」「足踏みがみられる」といった表現とともに文章で発表される.政府が経済状況をどのように判断しているのかという情報は市場参加者や企業経営者にとって重要なものだが,基調判断の決定理由は「ブラックボックス化」されている.また,事後的に景気動向指数研究会によって決定される公式の「景気の山・谷」の判断との乖離があることも指摘されている(政府の判断の変更が遅い).とりわけ,直近の景気の「山」(18年10月と認定された)以降については20年2月まで「回復している」という判断を維持しており,乖離が大きかった(判断の変更が遅れた).本稿では,基調判断文を生成するモデルの作成及び予測精度の検証を行った上で,「どのような経済指標に判断が引きずられやすいか」「どの程度の期間の経済指標を見て判断しているか」などを検証した,さらに,前政権までのデータセットを用いて作成したモデルと比較し,現政権が出してきた基調判断の表現が強すぎることも示した.このように,日本政府の基調判断文の「クセ」を学習することで,事前に日本政府の景気認識の変化やそれに伴う政策変更の予想に役立てることができるなどの効果が期待される.
キーワード†
テキストマイニング, 深層学習, data-to-text