市場暴落後の反発時における投資家の振る舞いと人工市場への示唆†
著者†
水田孝信(スパークス・アセット・マネジメント株式会社),八木勲(神奈川工科大学),和泉潔(東京大学)
概要†
東証株価指数(TOPIX)配当込みのデータを用いて日本の株式市場においても急騰後の反落は有意に存在しないことを示し,オーバーリアクション仮説では説明できないこの現象が,板寄せモデルなら説明しうることを議論する.また,TOPIX先物のティックデータを用いて日中の需給のアンバランスによる価格変動が板寄せモデ ルで説明できることを示す.さらに,ボラティリティクラスタリングが,板寄せモデルと効用関数方式の発注株式 数モデルを採用すれば説明できることを示す.そして最後に,ボラティリティクラスタリングなどのスタイライズ ドファクトが,学習メカニズムを組み込まなくても説明できてしまう点の問題点を議論する.人工市場モデルにおいて学習メカニズムは,ファイナンス分野でバブルや市場急落などで本質的なメカニズムと考えられているポジ ティブフィードバック現象を再現するのに必要であると考えられる.学習のない人工市場で市場急落などの現象を取り扱えるのかという問題提起を行う.